飲食店の創業融資のための創業計画書

日本政策金融公庫で創業融資を受けるためには「創業計画書(事業計画書)」と呼ばれる書類を用意する必要があります。非常に重要な書類です。

 

実際の創業計画書

実物を見た方が早いですよね。創業計画書のフォーマットは日本政策金融公庫のホームページで公開されています。

引用元:日本政策金融公庫 各種書式ダウンロード

そして、開業したい業種ごとの記入例も公開されています。例えば「洋風居酒屋」だとこんな感じです。

引用元:日本政策金融公庫 各種書式ダウンロード

そしてこの事業計画書の記載のポイントは「創業の手引き+ 新たに飲食業を開業される皆様へ」というまとめがあります。

例えば「経営者の略歴」という項目では「勤務先、勤務年数を記載するだけでは自分の強みを十分に伝えきれていません」というアドバイスが書かれています。実績などを書くと良いそうです。

 

補足的な話

さて、公式サイトに書かれている情報だけをご紹介しても有益ではありませんよね。少しだけ表向きではないことを書きます。

参考資料だけですべての数字は分からない

まず、創業の手引きだけすべてを理解することはできません。例えば「原価率・人件費率の目安」という項目では一般食堂は原価率が37%、人件費率が33%と書かれています。しかし、その前の「業態ごとのコスト配分」では原材料費、人件費、家賃、その他経費、利益という分類で書かれています。先の原価率は原材料費だけのことなのか、家賃やその他経費も含まれているのかは読み取れません。

上記の「創業計画書の記入例(洋風居酒屋)」の画像の中に「個人事業主の人件費は利益欄に書きなさい」と書かれています。これをベースに考えるなら、個人事業主だけで営業する飲食店の人件費率はゼロ%ということでしょうか。そもそも、居酒屋と言っても、規模や立地(家賃)、目的によってまったく経費や利益の金額は異なります。

つまり、「事業の見通し」に書くべき数字(金額)は相応の知識と経験がないと「的外れ」な内容になってしまいます。もちろん、審査する側は数字に詳しい人しかいないので、そのズレがすぐに分かります。事前に何度も相談すると良いでしょう。(経営者の略歴などの記載例は参考になります)

立場を考えて記載する

創業計画書は「経営者(自分)のための書類」ではなく、「融資する側の審査物」です。ただ回答するのではなく、アピールする必要があります。

極端に言えば、本当に分からない(決まっていない)場合でも「分かりません」ではなく、「それらしい内容」を書くべきですよね。本音ではなく、審査する側が求めていることを書くと審査は通りやすいでしょう。もちろん、嘘をつけ、という意味ではありません。少しだけ「盛ったり」、あいまいな内容でも「自信をもって明記する」ことで、審査する側の心象も良くなるでしょう、という意味です。

例えば、「高校生のころから漠然と飲食店を持つ夢があったけれど、実際に行動をはじめたのは1年前の27歳のとき」という場合、「創業は思いつきではなく、以前から考えていたことですか?」という創業の手引きの問いに当てはめると、「1年前から準備をはじめました」ではなく、「10年以上前からの夢で、就職してからコツコツ開業資金を貯め、飲食業界で経験をつんできました。1年前から本格的に開業セミナーなどに参加しています」の方が印象が良いわけです。

聞き手や相談相手が「あなたは本当は昔から飲食店を持ちたかったのではないですか!?」と質問してくれるとは限りません。立場上、審査する側は極端に誘導するようなことは言いません。

「ここの数字はもっとこうじゃないですか?」と質問という形のアドバイスしても、「いえ、ちゃんと計算しているんで!」という方がいます。そう言われるとこちらも「そうですか…」としか言えません。しかし本心では「このままじゃダメだろうな…」と思っています。ポジショントークというか、誰もが思ったことをすべてアドバイスくれるとは限りません。

融資する側はお金を貸すことが仕事なので、どんどん貸したい、借りて欲しいのです。相談者や申込者に厳しいことを言うのはその人に恨みがあるわけではなく、このままだと貸せない(借りてもらえない)からです。

創業計画書を書くとき、また相談に行くときは、審査する側やアドバイスする側の気持ちになると良いでしょう。